以下では、他のページで学んでいただいたことの復習をかねて、成年後見制度の重要なポイント、ちょっと気になる専門用語などについて、Q&A方式でご説明します。
A1.後見人になったら、以下のことを確実に行いましょう。
A2.後見人の責務を正しく理解し、与えられた権限の範囲を守って、誠実に後見人としての仕事を遂行しましょう。
A3.いざというときに、あわてなくてすむように、準備をしておきましょう。
A4.後見人には大きな法的権限が与えられますが、だからといってなんでも出来るということではありません。以下のようなことは、本来そのような権限が後見人に与えられていないものです。
A5.「身上監護」とは、ご本人の生活そのものに関すること、医療や看護、介護といった、ご本人の心身の状況に関わることについて、注意をして見守り、必要なときにはご本人を保護することをいいます。
後見人は「財産管理」とともに、この「身上監護」についての法律行為を行うことになっています。具体的には、以下のような仕事をします。
A6.「法律行為」とは「行ったことが法律上の効果を生じる行為」のことで、それを行うことで「権利を取得したり、義務を負ったりするような」ことを言います。「ご本人に介護保険のデイ・サービスを受けてもらい、その費用を支払う」といった契約などが法律行為に該当します。
一方、「事実行為」とは、「法律行為」に相対するもので「それを行っても、法律上の効果を生まない行為」とされています。上記を例に取れば、「ご本人をデイ・サービスの拠点まで連れてゆく行為」で、ご本人の手を引いてセンターまで一緒に行くこと自体は、法的な効果を生むものではないため「事実行為」と判断されます。また、ご本人の買い物に付き合うことや、料理を作ってあげることなどは、いずれも「事実行為」となります。
いずれも、普段、普通の人が使う言葉ではありませんし、「これは法律行為か? 事実行為か?」などと考えも込むような問題でもありません。
ただ、後見人の本来の仕事は、たとえば「デイ・サービスのメニューを選んで契約し、そのサービス利用料を支払うこと」であって、「ご本人をそこまで連れてゆくこと」は後見人の責務には含まれないということを理解しておきましょう。
A7.同じ一人の人間なのに、利害が相反する二つ以上の、異なった法律上の立場や権限が与えられた状態をいいます。
たとえばグループホームの施設管理者であるAさんが、入居者Bさんの後見人になったとすると、Aさんは本来、グループホームのサービスを提供する側であり、その施設の利益のために働くことが本来の仕事なのですが、Bさんが施設のサービスに不満を持っているとき、Aさんは後見人として「Bさんの不満を代弁してサービス改善の要求をする」という仕事をしなければならない立場に置かれます。このようなとき、Aさんは「Bさんの不満を解消しようとすれば、職員を増やさなければならないので、Bさんには我慢してもらおう」と思うのが普通で、これではBさんの後見人としての職責を放棄したことになります。
「こちらを立てればあちらが立たず、あちらを立てればこちらが立たず」という、まさに矛盾を抱え込んだ状態を言います。また、それが金銭的な利害損得となると、一層難しい状況に陥ります。
長男であるYさんは母親Xさんの後見人になっていましたが、長年入院していた父親が亡くなりました。そこで、母親のXさんと後見人であるYさん、それから妹のZさんの3人が相続人となったわけですが、母親Xさんは既に判断力が失われていますから、遺産相続の協議に参加することができません。長男Yさんは、「家のローンもあるし、少しでも多く財産を相続したい」と思いますが、同時に、母親Xさんの後見人ですから、母親が法律で定められた相続の配分額を受け取れるようにする立場でもあります。「どうせ母親は何も分からないのだから、妹を丸め込んで自分の取り分を多くしようか・・・」と思うのも、正しくはありませんが、人情というものかもしれません。
これが「利益相反」です。このような状態では、母親の正当な権利を確保することができませんので、後見人であるYさんは、家庭裁判所に「特別代理人」を立てる申請をしなければなりません。特別代理人は母親の権利を主張する立場であり、長男、妹との相続の協議に加わって、母親の法定相続分をしっかりと確保することになります。長男Yさんに後見監督人がついている場合には、監督人が特別代理人の役割を果たします。
Yさんが法定後見の申請手続きを行なうときに、すでに上記のような相続問題が発生していれば、家庭裁判所は「後見人候補者であるYさんが利益相反の立場にある」と判断して、後見人にはYさんとは別の第三者(弁護士や司法書士といった人)を後見人に選任することになります。
後見人を引受けた後で「これは利益相反ではないか?」と思われる状況は、いろいろな場面で発生すると思います。そのような時は、家庭裁判所や後見監督人に相談して指導を受けるのが正しいやり方です。