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成年後見制度の背景と目的

高齢者の犯罪被害防止と権利擁護の仕組み

高齢者の増加に伴って、高齢者に対する虐待や犯罪行為、悪質な商品販売などが確実に増え続けています。厚生労働省の実態調査では、生命に危険が及ぶような深刻な虐待を受けた高齢者が10人に1人という驚くべき結果が出ていますし、また、詐欺や悪徳商法などについても被害が毎年、より深刻なものとなっている実態が数字に現れています。

  • いわゆる「おれおれ詐欺」(振り込め詐欺・架空請求・融資詐欺)
    2005年の発生件数 21,612件 被害額 251億円
  • 悪徳リフォーム契約
    契約件数 5,400人 被害額 115億円 (警察庁まとめ)
  • 高齢者の消費者トラブル(訪問販売・電話勧誘・次々販売など)
    2005年 70歳以上の人が契約者となった相談案件 138,526件 (国民生活センターまとめ)

報告事例の中には、和服・装飾品など総額で900万円もの高額商品を次々と契約させられたケースや、一方的な床下工事などで300万円もの負担が生じて、年金を使い果たした人など、高齢者の生活設計を根底から破壊するような深刻なものも含まれています。それぞれに手口の違いはあっても、高齢者には本来不必要なものを、実際価値の数倍もの値段で過剰に売りつける商法で、高齢者の孤立や、物忘れ・痴呆、恐怖心などを巧みに利用した、極めて悪質な商行為といえます。

しかし、高齢者が一人でこれらの悪質商法に対処することは簡単ではありません。自治体、警察、消費者センターなどでも、「不審な場合はきっぱりと断る」、「身近な人に相談する」などの対処法を訴えていますが、相手は高齢者のどこが弱点かを一瞬で見抜くプロであり、また、ひどい物忘れや痴呆に付け入られた場合には、手の打ちようがないようにも思えます。

このような、判断能力が不十分となった高齢者の権利擁護を目的とした「成年後見制度」が平成12年4月からスタートしています。本来は痴呆症や知的障害などの理由で判断能力が不十分となった成年者のために、法律上の権限と責任を持った「後見人」を付け、本人が普通の生活を送る上で支障の出ないよう支援する制度ですが、悪質な商取引や犯罪からの保護にも大きな力を発揮します。内閣府においても、法務省、厚生労働省、警察庁などが協力して認知症高齢者等の保護のため、成年後見制度の推進を行っています。成年後見制度は「法定後見」と「任意後見」という二つの制度から成り立っています。

概要は以下のとおりですが、当サイトの「ビジュアル解説」で詳しく説明していますので、ご覧ください。

法定後見制度

痴呆症などで既に判断力が不十分となった人について、家庭裁判所が適切な保護者を選任する制度で、本人の判断力の程度により、「後見人」「保佐人」「補助人」が付けられます。「後見人」の場合には、本人に代わって本人の財産管理や生活に必要なすべての契約行為(介護サービス、施設への入居契約など)を行います。また、後見人は本人の財産や生活全般を守る義務を負っており、不当な売買契約などが行われた場合には、その契約を取り消す法律上の権利も与えられています。

任意後見制度

正常な判断力がある間に、本人が自由意志で選んだ後見人との間で、公正証書による「任意後見契約」結んでおきます。判断能力が不十分(痴呆症等)になった時には、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督の下で、任意後見人が本人に代わって財産管理や生活上必要な契約など行います。任意後見人には契約取消しの権限はありません。

いずれの場合にも、後見人は本人の意思を最大限に尊重し、心身の状況や生活の状況に配慮しながら普通の生活が維持できるように、本人のために最善の努力をするよう義務付けられています。したがって後見人はその与えられた権限を活用し、また、本人との緊密な連絡を保ちながら、判断力の低下した高齢者を事故や犯罪などから守り、安心できる生活環境を維持していく役割を果たします。

残念なことに、この「成年後見制度」はまだ十分に知られておらず、制度のスタートから既に6年が経過しましたが、全国での累計利用状況は約9万件たらずと低調です。解決すべきいろいろな問題も抱えていますが、現在でも痴呆症の高齢者などが170万人もおられる中で、この制度の意義とその重要性が、一人でも多くの人々に理解され、社会に浸透し定着するよう、努力して行きたいと考えます。

こちらのビジュアル解説のページもご覧ください。

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